おはようございます、サービス管理責任者の関です。
前回の前編を見ながらも、後編だけでもためになるお話になります。
話の流れがどのように始まったか気になる方は、前編を読んでから進めて貰えると助かります。それでは引き続き進めていきましょう。
夫の状況がある程度把握できた筆者は、次のような提案をしてみました。
「ご主人がフルタイムで働くことが難しいようであれば、障害年金と短時間就労の組み合わせで生活費を確保する方法も検討してみてはいかがでしょうか。ご主人はそのご病気で初めて病院を受診した日が厚生年金に加入中(会社員の時)とのことなので、障害厚生年金を請求することになります」
「仮に障害厚生年金がもらえたとすると、いくらぐらいになるのでしょうか?」
「障害厚生年金の金額は、ざっくりいうと今までの給料やボーナスの金額を基に計算されます。ご主人の今までの平均年収(初任給から現在までの平均年収)が分かれば、大まかですが試算することは可能です。それでもよろしいでしょうか?」
「はい。だいたいでけっこうです」
■「2級」なら月約15万2200円の支給を受けられる
夫の今までの平均年収はおよそ400万円とのことなので、筆者はそれぞれの年金額を紙に書き出していきました。
■障害年金の3級に該当した場合
障害厚生年金 月額 約4万8600円
※障害基礎年金には3級がないので障害厚生年金のみ
■障害年金の2級に該当した場合
障害厚生年金 月額 約4万5200円
配偶者の加給年金 月額 約1万8600万円
障害基礎年金 月額 約6万4800円
子の加算 月額 約1万8600円
障害年金生活者支援給付金 月額 約5000円
合計 月額 約15万2200円
※今回のケースで障害厚生年金の2級に該当した場合、配偶者加給年金、障害基礎年金2級、子の加算、障害年金生活者支援給付金も併せて受給できる。
※厚生労働省の「障害年金ガイド」より
障害の程度2級
必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害です。例えば、家庭内で軽食をつくるなどの軽い活動はできても、それ以上重い活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅で、活動の範囲が病院内・家屋内に限られるような方が2級に相当します。
障害の程度3級
労働が著しい制限を受ける、または、労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態です。日常生活にはほとんど支障はないが、労働については制限がある方が3級に相当します。 試算を終えた筆者は、障害年金2級の合計金額のところを指さしました。受け取れる合計額が月15万円余りです。
「仮に障害厚生年金の2級に該当すれば、奥様のパートとご主人の短時間就労で月々の生活費は何とかカバーできそうです」 すると妻は疑問を口にしました。
■「働けるようになったら障害年金はもらえませんか」
「夫が働くようになったら、障害年金はもらえなくなってしまいませんか?」
「確かにそう不安になる方は多くいます。しかし、精神疾患をお持ちの方が働けるようになったからといって、必ずしも障害年金が停止されてしまうわけではありません。厚生労働省の『国民年金・厚生年金保険精神の障害に係る等級判定ガイドライン』では、就労状況に関しては次のように説明されています」
<安定した就労ができているか考慮する。1年を超えて就労を継続できていたとしても、その間における就労の頻度や就労を継続するために受けている援助や配慮の状況も踏まえ、就労の実態が不安定な場合は、それを考慮する>
<就労系障害福祉サービス(就労継続支援A型、就労継続支援B型)及び障害者雇用制度による就労については、1級または2級の可能性を検討する。就労移行支援・就労継続支援についても同様とする>
※厚生労働省 国民年金・厚生年金保険精神の障害に係る等級判定ガイドラインより一部抜粋 このガイドラインを踏まえ、筆者は次のように述べました。
「障害年金と就労の関係をざっくり言うと、ご主人がフルタイムで働けるようになった場合、障害年金が停止されてしまう可能性があります。一方、短時間就労などで働くのが精いっぱいといった場合は、障害年金が停止されない可能性が高いです。実際に障害年金を受けながら就労されている方は多くいます」
「それを聞いて安心しました。私の希望としては障害年金の2級になってほしいところですが、実際のところどうなのでしょうか?」
「障害年金の何級に該当するかは、医師の作成する診断書によるところが大きいです。もちろん診断書だけではなくその他の書類も考慮されますが、やはり診断書の影響は大きいと言えます。そのため、医師にはご主人の日常生活の状況がしっかりと伝わっている必要があります。すべての場合でそうだとは言いませんが『毎回の問診が数分で終わってしまう』『ご本人が口頭で日常生活の状況をうまく説明できていない』といったことを耳にすることがあります。そのような場合、医師に診断書の記載をお願いしたとしても、ご本人の状況をしっかりと反映していない内容になってしまう可能性もあるからです」
筆者がそこまで説明したところ、妻は困った表情を見せました。
「では一体、何をどのようにすればよいのでしょうか?」
「例えばご主人の日常生活の様子を文書にまとめ、診断書と一緒に医師に渡すといった方法があります。障害年金の精神疾患用の診断書には、その障害で日常生活がどの程度制限されているのかを判定する項目があります。その項目を参考に、ご主人が日常生活でどのくらい困難さを抱えているのかをまとめてみるとよいでしょう。実際にこの場で少しやってみましょうか?」
筆者の提案に妻は同意を示したので、夫の日常生活の状況についていくつか質問をしてみることにしました。 まずは食事について。夫は病気のため食欲があまりなく、自分で食事を作る気力もないそうです。そのため食事は妻が用意したものをとっています。食事の量は成人男性の半分程度。おかゆを茶碗に少量だけ食べるのが精いっぱいの時もあるとのことでした。
次は身辺の生活保持について。入浴は1週間に1回から2回程度、下着の着替えも1週間に2回程度とのことでした。妻から「毎日入浴をするように」「下着は毎日着替えるように」と言われているのですが、どうしてもできません。妻から何度も何度も言われて何とか入浴や着替えをしている状態とのことでした。
そこまで聞き取った筆者は、妻に「今お話いただいたようなことを文書にまとめていけば大丈夫です。その他の評価項目も同様にまとめていきます。(社労士の)私のほうで文書作成や請求をすることもできます」とアドバイスをしました。
先の見通しが立ったようで、やっと妻にも少しだけ笑顔が戻りました。 面談後、妻は夫に障害年金と短時間就労の組み合わせで生活費を確保する方法もあることを伝えました。「フルタイムで働けなくても何とか生活が成り立ちそう」。そのような見通しが立ったとことで、夫も安心感を得たようです。
その後、夫は就労移行支援について調べるなど、就労に向けて少しずつ行動をおこすようになりました。
(社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田 裕也)
———- 浜田 裕也(はまだ・ゆうや) 社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 平成23年7月に発行された内閣府ひきこもり支援者読本『第5章 親が高齢化、死亡した場合のための備え』を共同執筆。親族がひきこもり経験者であったことからひきこもり支援にも携わるようになる。ひきこもりのお子さんをもつご家族のご相談には、ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として利用できる社会保障制度の検討もするなど、双方の視点からのアドバイスを常に心がけている。ひきこもりのお子さんに限らず、障がいをお持ちのお子さん、ニートやフリータのお子さんをもつご家庭の生活設計のご相談を受ける『働けない子どものお金を考える会』のメンバーでもある。 ———-
今回は筆者のプロフィールも掲載させて頂きましたが、
実は我がCOCOCARAにも来て頂いて、利用者の方の障害年金についてご相談をして頂いております。ということでこれまでの…ことも含めて掲載しました。
以上、サービス管理責任者の関がお送りしました。
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