指定難病は患者数も少なく、珍しい病気のため、どういったものかイメージが沸かないという方もいるのではないでしょうか。
しかし指定難病の黄色靱帯骨化症などは、野球選手や大相撲の力士などスポーツ選手が患ったことで、ニュースで病名を聞いたという方もいるかもしれません。
現在難病を抱える方を取り巻く環境は少しずつ改善されていますが、それでも多くのハンディキャップを背負って生活しているのです。
今回は難病の方が利用できる医療・福祉サポートについてお伝えします。
難病とはどんな病気?
厚生労働省のガイドラインによると、難病とは発病のメカニズムが不明で、治療法が確立しておらず、完治が難しい珍しい疾病を指します。
難病と聞くと「一生治らない重い病気」「ベッドで介護を受けながら過ごす」といったネガティブなイメージを持つ方もいるのではないでしょうか。
しかし実際は常に介護を必要とする難病患者は、現在では減少傾向にあります。
医療の進歩などにより症状を安定させることが可能になり、ほぼ問題なく日常生活を送れる方も増えているのです。
症状が軽い方は通院や薬の服用などで病状をコントロールし、職場の配慮等があれば問題なく仕事をすることもできます。
実際に障害者職業総合センターの調査では、どのような難病を患っているかによって違いはありますが、多くの難病患者が仕事についていることが分かります。
しかし病気自体は完治させることはできず、重い症状に苦しむ方がいることも事実です。
法律によって定められた難病の定義は、以下の4つになります。
・発病の仕組みが明らかではない
・治療方法が確立していない
・希少な疾患である
・長期の療養を必要とする”
参照:障害者職業総合センターHP https://www.nivr.jeed.go.jp/option/nanbyo/survey.htm
指定難病とは
難病の方は長期の治療を余儀なくされ、経済的に大きな負担を強いられることがあります。
そのような方を支援する制度として「指定難病」があるのです。
指定難病の定義
難病の患者の中には長期間にわたり、高度な医療を受ける必要がある方もいます。
そういった難病の方のために「難病の患者に対する医療等に関する法律(以下難病法)」が2015年に施行されました。
一部の難病を「指定難病」とし、医療費助成制度の対象とすることで、長期にわたる医療費負担を軽減することが目的です。
端的に言うと指定難病とは難病法に定められた難病のうち「医療費助成の対象となる難病」のことを指します。
指定難病の定義には先に述べた難病の4つの定義に加えて、以下の2つが当てはまる必要があります。
・患者が一定の人数(人口の0.1%程度)に達しないこと
・客観的な診断基準(またそれに準ずるもの)が確立していること
代表的な指定難病の種類
2021年(令和3年)に新たに6つの難病が指定難病に追加されたことで、現在指定難病は338疾病に拡大しています。
指定難病というと、聞いたこともないような珍しい病気ばかりと思ってしまうかもしれませんが、疾病数の多い指定難病としては「潰瘍性大腸炎」や「パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病)」など一般的に知られている疾病もあるのです。
参照:厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000084783.html
参照:公益財団法人難病医学研究財団HP難病情報センター https://www.nanbyou.or.jp/
難病の方への支援
難病の方が受けられる支援はたくさんあります。
どの様なサポートがあるのか紹介します。
医療費助成制度とは
難病患者の医療費負担の軽減を目的とし、医療費の一部を助成する制度です。
対象となるのは難病法による指定難病の中で、重症者や医療の継続性においてサポートが必要と認められると難病医療費助成制度を利用することができます。
具体的には症状を指定難病の重症度分類等に照らして、病状の程度が基準以上と診断された方、もしくは症状が基準を満たしていなくても高額な医療費を継続的に必要とする方が対象です。
参照:公益財団法人難病医学研究財団HP病気の解説・診断基準・臨床調査個人票の一覧 五十音別索引 https://www.nanbyou.or.jp/entry/5466
難病医療費助成の内容
医療費助成の対象は外来受診・入院も区別されず、同じ月に複数の医療機関を受診しても自己負担額をすべて合算した額に適用されます。(※ただし食費は除きます。)
指定難病の方は医療費の窓口負担が3割から2割に引き下げられます。
医療費助成制度により認定されると、図1の「医療費助成における自己負担上限額(月額)」と「自己負担分(医療費の2割)」の場合を比較し、患者の自己負担額は金額の低い方で算出されるのです。
(図1)出典:公益財団法人難病医学研究財団HP難病情報センター
例えば一般所得Ⅰの方が月に8万円の医療費がかかると、医療助成の上限は1万円ですが、医療費の2割だと1万6千円になります。
この場合、金額の低い医療費助成で算出されるのです。
また高額な医療費が長期にわたり発生する患者(高額かつ長期)に対しては更に減額となり、人工呼吸器など生命維持に必要な装置を装着している患者に対しては、所得区分にかかわらず、自己負担上限額(月額)は1,000円となります。
他にも重症度分類に満たない軽い症状でも、医療費が高額にのぼる患者(軽症高額該当症状)も医療費助成を受けることができます。
これら難病患者の医療費助成の支給に対しては、医療保険(国民健康保険・健康保険組合など)や介護保険による支給が優先されます。(保険優先制度)
参照:第一次実施分の指定難病の検討について
https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/keikasoti180117.pdf
申請方法
実際の難病医療費助成の申請方法は以下の通りです。
- お住いの都道府県の窓口へ
都道府県の窓口で申請の手続き・必要な書類を確認します。
※難病情報センターでも窓口を確認できます。
②指定医療機関で難病指定医を受診
難病指定医を受診して、診断書(臨床調査個人票)を作成してもらいます。
③.必要書類を都道府県窓口へ提出
・支給認定申請書、診断書(臨床調査個人票)
・住民票、市町村民税(非)課税証明書などの課税状況を確認できる書類
・健康保険証の写しなど
④都道府県による審査の後、指定難病医療受給者証の交付
都道府県が支給認定を行い、支給認定されると「指定難病医療受給者証」が交付されます。
参照:公益財団法人難病医学研究財団HP難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/ (※)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/5460
障害者手帳
ケガなどの後遺症と違い難病の方は症状が変動しますが、医師の診断によっては障害者手帳取得の可能性があるのです。
例えば、身体障害の症状がある悪性関節リウマチの方であれば、身体障害者手帳を取得できるかもしれません。
障害者手帳を取得すると、医療費等の助成や税金の減免や控除などの支援を受けられます。
障害者手帳がなくても利用できる障害者総合支援法
難病や障害のある方の日常生活や社会生活を総合的に支援しており、支援が必要と認められると障害者手帳がなくても様々なサポートが受けられます。
また障害者総合支援法における難病の定義は、治療方法が確立しておらず、長期の療養を必要とされる疾病で、客観的な指標による一定の診断基準を満たしている場合であり、難病法よりも緩やかな定義になっています。
サポートの内容も介護を伴う方や自立生活を目指す方、就労支援に至るまで様々なサービスを提供しています。
参照:厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/index.html
難病の方が受けられる就労支援
難病を抱える方が受けられる就労支援の一部をご紹介します。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は一般企業への就職を目指す、難病や障害を持つ方のための就労支援サービスです。
通所型の施設で職業訓練や就職活動のサポート、就職後の定着支援などを受けられます。
事業所によって学べるスキルが異なるため、どのような仕事に就きたいのかを吟味して事業所を選びましょう。
ハローワーク
ハローワークでは難病や障害のある方のための専用窓口を設け、症状や障害に応じた職業紹介を行っています。
また難病患者就職サポーターを設置し、難病相談支援センターと連携しながら、難病の症状を踏まえたきめ細やかな支援をしています。
参照:厚生労働省HP『全国ハローワーク一覧』
https://www.mhlw.go.jp/kyujin/hwmap.html
地域障害者職業センター
各都道府県に設置された地域障害者職業センターでは、難病や障害を抱える方の職業評価や職業相談、職業準備支援等と幅広くサポートしています。
参照:高齢・障害・求職者雇用支援機構HP『地域障害者職業センター一覧』
https://www.jeed.go.jp/location/chiiki/index.html
まとめ
今回は難病の方が利用できるサポートについてお伝えしました。
様々な治療法が発見された現在でも、難病を完治させるのは難しい現状があります。
しかし適切な医療的処置を継続的に施すことによって、日常生活を問題なく過ごせる方も増えてきました。
医療・福祉のサービスを利用して、生活の質を向上させ、難病に負けない充実した人生を送りましょう。
私たちCOCOCARAは、就労移行支援事業所として、障害等の事情があってお仕事に就くことに苦労している方に対して、相談や就職準備、アドバイスなどのサポートを行っています。
「障害があるから仕事が見つからない…」などのお悩みを抱えている方は、一人で悩まずに一度相談に来てみてはいかがでしょうか。
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