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高次脳機能障害とは?~症状・回復の可能性や社会復帰のために知っておきたいこと~

「事故の後から性格が変わった」「以前のように集中できなくなった」そんな変化の背景に、高次脳機能障害が隠れている場合があります。

厚生労働省の最新の調査によると、現在約22.7万人の方が高次脳機能障害と診断され、日々様々な症状と向き合っています。

高次脳機能障害の最大の困難は、外見からは障害がわかりづらいため、周囲の理解が得られにくい点でしょう。

しかし症状を正しく理解して、適切な支援やリハビリを受けることで、穏やかな生活や社会復帰を目指すことは十分可能です。

今回は「高次脳機能障害とは何か」「代表的な症状や治療・リハビリの方法」「社会復帰に向けた支援制度」についてここあらさんとお伝えします。

参照:厚生労働省「令和4年生活のしづらさなどに関する調査 (全国在宅障害児・者等実態調査)結果の概要」5P

ここあらさんってだあれ?(ココをタップ♬)

就労移行支援事業所COCOCARAのキャラクターであり、Instagramでは様々な知識を教えているよ!

高次脳機能障害とは

高次脳機能障害とは、脳の損傷によって「記憶」「注意」「判断」「感情のコントロール」などの知的・心理的な機能に影響が出る障害です。

主に記憶障害や注意障害、遂行機能障害、感情コントロールの困難などの病状が現れます。

これらの症状は周囲から障害と認識されにくいため、本人の努力不足や性格の問題と誤解されることも多く、社会生活に影響が出やすい障害です。

また、症状の類似性から認知症と混同されることもあります。

高次脳機能障害と認知症の症状は似ているものの、発症時期の明確さや、進行性の有無などから、原因や治療へのアプローチは異なります。

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高次脳機能障害の原因と症状―記憶・注意・言語・行動の変化―

高次脳機能障害は見えない障害とも呼ばれる、脳の損傷による後遺症です。

その原因と主な症状をわかりやすく紹介します。

高次脳機能障害の原因

高次脳機能障害は「脳への何らかのダメージ」が原因で生じます。

主な原因は、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの脳血管障害が最も多く、次いで交通事故や転倒による頭部外傷が続きます。

他にも心停止や窒息などによる低酸素脳症、脳炎や中毒などでも発症することが知られています。

外傷性の場合、当初は重篤な意識障害を伴わなくても、後から高次脳機能障害の症状が顕在化するケースもあるため、退院後の注意観察が重要です。

高次脳機能障害の主な症状と日常での気づき

高次脳機能障害の症状は多様で、外見からは分かりにくい点が特徴です。

日常生活や職場において、ミスや対人トラブルの増加として現れることが多く、「性格が変わった」「怠けている」と誤解されることも少なくありません。

症状の現れ方は個人差が大きく、複数の症状が重複することもあります。

一般的には次の5つのタイプに分類されます。

①記憶障害(新しいことが覚えられない、約束を忘れる等)

②注意障害(集中できない・同時作業が苦手)

③遂行機能障害(計画を立てられない、段取りが悪くなる)

④言語障害(言葉が出にくい・理解しにくい)

⑤社会的行動障害(感情の起伏が激しくなる・自己中心的な振る舞いが増える)

参照:国立障害者リハビリテーションセンター「高次脳機能障害を理解する」

参照:東北医科薬科大学病院「高次脳機能障害」

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高次脳機能障害は治るのか?

多くの当事者や家族が抱く最大の関心は、「高次脳機能障害は治るのか?」という点でしょう。

医学的に見ると、脳に生じた損傷そのものが、完全に元通りになることは難しいとされています。

しかし、適切なリハビリや訓練によって別の神経経路が働き、機能が回復することがあります。

回復には早期のリハビリや周囲の理解と協力、そして本人が安心して挑戦できる環境が大切です。

家族や職場の理解によって、患者の治療への意欲を高め、生活リズムを整えて記憶や注意力を補う訓練を行うことで、社会復帰の道筋を作ることができます。

高次脳機能障害は完治よりも、回復や改善を目指す障害なのです。

高次脳機能障害の治療法

高次脳機能障害の治療は、失われた脳機能を他の領域が補う、脳の可塑性を生かしたリハビリが主軸となります。

医師・作業療法士・言語聴覚士・臨床心理士・ソーシャルワーカーがチームとなり、患者の症状や生活状況に応じて支援を行います。

家庭や職場の環境調整も治療の一部と位置づけられ、本人だけでなく家族への教育やカウンセリングも重要です。

日常生活そのものを治療の場として活用する「生活リハビリ」は、作業療法、理学療法、言語療法、生活訓練などが含まれています。

また、高次脳機能障害の治療には、薬物療法も取り入れられています。

ただし薬物治療は注意機能や記憶障害、情動障害などの症状を和らげるために、あくまでも補助的な役割として利用されています。

高次脳機能障害は短期間で治すものではなく、生活を通して機能を再構築していく必要があるため、焦らずに継続することが最も重要なのです。

障害別のリハビリ方法

高次脳機能障害のリハビリは、症状の種類ごとに適した訓練を行うことが重要です。

代表的なリハビリ方法や支援のポイントを紹介します。

①記憶障害

新しい出来事や約束を覚えられない場合は、外部記憶を活用するリハビリが有効です。

メモ帳やスマートフォンのリマインダー、予定表などを使って、忘れない仕組みを作ります。

訓練では、日常動作の中で「記録→確認→実行」の習慣を身につけることを重視します。

また、作業療法士の指導のもと、成功体験を積み重ねることで、記憶の補完力を高めることが可能です。

②注意障害

「集中が続かない」「複数のことを同時にできない」といった症状に対しては、注意の持続や分配能力を鍛える訓練が行われます。

たとえば、簡単なゲームやタスク練習(文字探し・音の聞き分け・計算など)から始め、段階的に刺激を増やしていきます。

注意が散漫になりやすい環境では、作業エリアを整理し、静かな空間で一つずつ作業できる環境調整も重要です。

③遂行機能障害

物事の計画を立てたり、順序立てて行動したりするのが難しい場合、作業療法士や支援員が「手順表」や「行動スケジュール」を作成し、一緒に段階的に実行していくリハビリを行います。

日常生活の買い物や料理などを課題にし、「目的を決める→手順を立てる→実行する→振り返る」といった一連の流れを繰り返すことがポイントです。

最終的には、患者本人が自ら計画を立てられるよう支援します。

④言語障害

「言葉が出にくい」「理解しにくい」といった症状には、言語聴覚士による個別訓練が中心になります。

発語練習・語彙の想起訓練・会話練習のほか、ジェスチャーや筆談、イラストなどを使った代替コミュニケーションのトレーニングも取り入れます。

近年では、タブレット端末や音声アプリを使ったICT支援も進んでおり、本人の意思表出を支えるツールとして有効です。

⑤社会的行動障害

感情の起伏が激しくなる、他者への配慮が難しくなるなどの症状には、情動コントロール訓練と社会スキル訓練(SST)が併用されます。

心理士によるカウンセリングやグループ活動を通して、自分の感情を理解・整理する力を育てます。

また、他者との関わり方や職場でのマナー、ストレス時の対処法などを練習することで、社会復帰に向けた安定を図ります。家庭や職場での支援者との協働も大切です。

高次脳機能障害の方はこれらの症状が重複して現れることも多く、症状の重なり方や程度には個人差があります。

しかし、どの障害でもリハビリの基本は本人の特性を理解し、日常生活と結びつけることです。

焦らずに医療・福祉・家族・職場が一体となって支援を続けることで、少しずつ生活の質を高められます。

リハビリの進み方には個人差がありますが、継続することで少しずつ生活の安定と自信を取り戻せるのです。

参照:国立障害者リハビリテーションセンター「高次脳機能障害支援マニュアル」

症状に個人差があるのと同じで、リハビリも人それぞれ

受けられる支援について

高次脳機能障害があっても、医療・福祉・就労の支援を活用することで、日常生活や仕事への復帰が可能です。

医療面ではリハビリテーション病院や高次脳機能障害支援センターで、認知・行動面の訓練を受けられます。

福祉面では障害者手帳や自立支援医療制度を通じて、費用面の支援を受けられる仕組みがあります。

そして就職などで社会復帰を目指す際は、就労福祉サービスの活用も視野に入れてみましょう。

たとえば就労移行支援事業所を利用することで、職業訓練や生活リズムの整え方、コミュニケーション練習、就職活動支援などが受けられるのです。

しかし、高次脳機能障害と診断された直後は、どこに相談すればよいのか戸惑う方も少なくありません。

ここでは医療・福祉・就労の各分野で利用できる代表的な支援を紹介します。

【高次脳機能障害の主な支援窓口と受けられる支援内容】

支援窓口・機関名主な支援内容対象者・利用条件相談方法・窓口例
高次脳機能障害支援センター(各都道府県)専門相談、評価・診断支援、リハビリ情報提供、就労・福祉機関との連携支援高次脳機能障害の疑い・診断を受けた方、その家族各都道府県の支援センターに電話または来所予約参照:高次脳機能障害普及事業支援拠点機関一覧
地域包括支援センター医療・介護・福祉の総合相談、高齢の方や家族の生活支援原則65歳以上、または支援が必要な高齢者市区町村役所HPで地域包括支援センターを検索・連絡参照:厚生労働省「全国の地域包括支援センター一覧
障害福祉課(市区町村役所)障害者手帳の申請、自立支援医療(更生医療)制度、福祉サービス利用支援医師の診断書がある方(障害者総合支援法の対象)市区町村の障害福祉課窓口で申請・相談可能
ハローワーク(専門援助部門)就労相談、職業訓練、障害者雇用枠での就職支援、職場定着支援働きたい障害のある方(手帳の有無は問われない場合あり)各地域のハローワーク障害者窓口で相談参照:厚生労働省「全国のハローワーク所在案内」
就労移行支援事業所就職に向けた訓練(ビジネススキル、生活リズム、コミュニケーション訓練)、就職活動支援、職場実習18歳〜64歳で一般就労を希望する障害のある方各事業所へ直接問い合わせ、見学・体験利用が可能
医療機関(リハビリテーション科・神経内科)医療的リハビリ、神経心理検査、機能回復訓練診断・治療中または回復期の方主治医や医療ソーシャルワーカーを通じて紹介を受ける
家族会・ピアサポート団体情報交換、悩み相談、体験共有、家族支援当事者・家族・支援者など日本高次脳機能障害友の会など、地域の家族会に参加可

ここあらさんのひとこと

「少しずつでも大丈夫

“できるようになったこと”を見つけていこう」

今回は見えにくい障害である高次脳機能障害の症状や、利用できる支援についてお伝えしました。後天性の高次脳機能障害は、私たち誰しもが罹患する可能性のある病です。自分や親しい人たちが高次脳機能障害になったとき、適切な対応をすることで、人生の質を損なわず自分らしく生きることができます。

私たち就労移行支援事業所COCOCARAでは、障害等の事情があって就職・再就職に悩んでいる方に対して、相談や就職準備、アドバイスなどのサポートを行なっています。「障害があるから仕事が見つからない…」などのお悩みを抱えている方は、一度相談に来てみてはいかがでしょうか。

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